2018.2.13

音楽居酒屋の名物スタッフ 林いずみさんと名古屋一ディープな街・今池ではしご酒!

音楽居酒屋の名物スタッフ 林いずみさん

TEXT:TOSHIO SAWAI / PHOTO:TAKAYUKI IMAI

昭和40年代頃まで栄えた歓楽街として知られ、いまではライブハウスが数多く並び立つ街「今池」は、大須と並んで名古屋のサブカルの発信地としても知られるエリアです。今回のMY FAVORITE ROUTEは、そんな今池の人気ライブハウス『TOKUZO』の名物スタッフとして知られる林いずみさんのお気に入りスポットを巡ります。

御菓子所しらいし

年中無休で朝からやっとる和菓子店だがね

林さんとの待合せは、地下鉄今池駅5番出口から徒歩1分の路地にある老舗和菓子店『御菓子所しらいし』。

店に入るなり林さん、和菓子を選びながら3代目・白石さんと「あんた今日の白衣ピカピカだが」「看板変わっとるけど、いつ変えた?」と世間話ばかりで和菓子の話は一切ナシ!
「え、和菓子についての話?聞かんでも美味しいのは知っとるし、白石は一級技能士の国家資格持っとるから(笑)」。そんなやり取りをするふたりは、今池商店街が毎年行っている「今池まつり」の打合せがキッカケで知り合い、いまや10年以上の付き合いになるそう。

「わたしは元々、今池の人間じゃないんで、今回紹介するのは“今池まつり”の打合せで会っとる人のお店ばっか。面白い人ばっかだが。そうそう『しらいし』の和菓子を大川興業(※)の大川総裁が好きで、持っていくと優しくしてくれるんだわ。助かっとる(笑)」と林さん。

今回のMY FAVORITE ROUTEは、林さんが今池に住みはじめてから仲良くなった面白い人たちに会えるルートとも言えそうです。

※大川興業:江頭2:50らが所属する芸能事務所

きも善

行くだけで元気になれる今池最強の居酒屋

『しらいし』を出て今池の交差点を渡り、今池西の交差点を南へ。『ピカイチ』や『味仙』など今池の有名店が並ぶエリアの中でも特に人気のある居酒屋が『きも善』です。

「『きも善』を紹介する理由は、店主のケン(田中兼二)さんがおるから。わたしにとっての今池の兄貴的な存在のケンさんと、どーでもいいバカ話をしながら飲んでると元気になれるんだわ。ひとりで来て空いてたらだいたいここに座る」と言いながらカウンターの端に陣取る林さん。
「ケンさんは『きも善』の2代目でもあるんだけど、今池プロレスのプロレスラーとしての顔もあるでらすごい人。10年以上“絶対王者”として君臨しとるんだわ!」

ちなみに今池プロレスは、今池商店街の活性化のために発足された地域密着型のプロレス団体。紅白出場アーティストnobodyknows+のMCでもあるノリ・ダ・ファンキーシビレサス(田中さんの中学の後輩にあたるそう)が所属していることでも知られています。

「今池プロレスは年に一度の今池まつりの時にもやるけど、今度(今池文化小劇場)ちくさ座で興行があるで見にこやあ。プロレスファンじゃなくても楽しいよ」と取材チームを誘ったかと思いきや、「さっき“しらいし”行ったらさ……」と店主に話しかけ今池界隈の世間話に花を咲かせる林さん。ここのスタッフが全員着ているTシャツの文字「今池ハードコア」は“筋金入りの今池好き”という意味だと思われますが、“ふたりともどんだけ今池好きなんやねん!”と心の中で突っ込んだ瞬間でした。

にぎり屋 すし藤乃

今池は、新参者にも優しい街!?

お客さんが増え混み合ってきた『きも善』を瓶ビール1本で切り上げ、はす向かいのビルの地下1階にある『すし藤乃』に河岸を変えます。

「今池は徒歩圏内で安くて旨い店がどえりゃああって飲むのに困らんて。え、行動範囲が狭い?なに言うとるが、近い方が楽でええが。名古屋が魅力がないなんて誰が言ったか知らんけど、なに言っとんだがって思うわ。わたしの生活だと普段ほとんど今池から出んけど、つまらんと思ったことない!みんな今池に引っ越してこればいいがね」。さらに「ここには素面で来たことはない(笑)」と大将の前の席に着く林さん。どうやらここにはいつも2軒目以降に来るようです。

ちなみに『すし藤乃』は以前に鶴舞で店を構えていたそうで、今池に移転したのは8年前のこと。大将の加藤さん曰く「やっぱり街の雰囲気は全然違います。今池のお客さんは個性的で面白い。裏表がないというか。商店街のメンバーもそうですけど、本音で言い合える心根の優しい仲間たちという感じがします」。「確かにわたしも今池のみんなが可愛がってくれるからなんとかやれてきとると思う」と林さんも同意。そしてふたりが今池にやってきた当時を振り返ってみて「結局街は住んどる人次第。今池が魅力的なのは住んどる人が面白くて優しいからだわ」という結論に至りました。

  • 「友人の誕生日をここで祝った時、魚のカブト煮をケーキにみたてて蝋燭を立ててもらったことがある(笑)」と林さん

懺悔と願掛けをできる一石二鳥なスポット「ごめんなさい地蔵」

『すし藤乃』で飲んだ日本酒の酔いざましも兼ね、次のスポット『蘭丸』に向かう前に、今池公園の西、住宅街の路地にある「ごめんなさい地蔵」に立ち寄りました。このお地蔵さんは「生き物(蚊・ハエ・ゴキブリ等)を殺した時、ウソをついた時、物を盗んだ時に“ごめんなさい”と言って手を合わせて謝るお地蔵さん」だそうです。また紙製の絵馬が置いてあり願い事を書くと叶うとか。早速林さん、「謝ることが多すぎて……」と言ってしっかり合掌し、2017年の懺悔をしていました。

蘭丸

女将のコーディネートはイリュージョン!

今池公園の南に立つビルの角にある『蘭丸』は、アンティークの着物やリサイクル着物を販売しているお店。「わたしにとっては緊急時の駆け込み寺的な存在。女将のスゴ技コーディネートで何度助けられたか!」と林さんは礼装の相談に何度も訪れているそう。

「20歳の時に買ってもらったけど気に入らなくて着てなかった振袖を、40歳を過ぎてから女将にコーディネートを任せて着たんだわ。そしたら本当にみんなから大好評で自分でも驚いた。合わせるスピードも驚異的で、まさに蘭丸イリュージョン!」と大絶賛。

ただ、ここに訪れるお客さんは、林さんのように晴れ着として着物を着る人ばかりではなく、カジュアルに和装を楽しみたい人も多いそう。また女性が6割、男性が4割だとも。「娘がハマってその後に親がハマることも結構ありますよ。あと以前“極妻の志麻さん(映画「極道の妻たち」の岩下志麻さん)にしてください!”って言われたこともある(笑)。着付はデザインだから、同じ着物でも着方次第で全然雰囲気が変わるんだわ」と女将の森田さん。

とここで取材チームが無茶ブリし、林さんのベレー帽に合わせて着物の見立てとコーディネートをしてもらうことに。突然のことにも関わらず、本当に一瞬で着物と帯がセレクトされ、ものの数分で半襟まで合わせてくれました。“蘭丸イリュージョン”を目の当たりにして驚きの取材チームでした。

  • 服飾専門学校卒の経歴を持つ林さんは「どえらい安いのもあるから、洋服のリメイク用なんかに買うこともある」そうです

女将のマジックで蘇った林さんの振袖。帯がアクセントになっていて相当オシャレです

喪服が白くなるほどキレイになる(!?)「青山クリーニング店」

「蘭丸」の後、最後のスポットに行く前に、林さんにとって今池のもう一人の兄貴的存在がいるという『青山クリーニング』にも立ち寄ります。「喪服が白くなるほどキレイになるのが青山クリーニング(笑)。ここの青山祐司さんは、今池商店街のメンバーでもあり、わたしにとって「きも善」の兼さんと並ぶ今池のもう一人の兄貴。ほんと尊敬しとるんだわ」と林さん大絶賛。ところが入店しての第一声は「しらいしの白衣がピカピカだったて!」と林さん。すると「あれは俺が仕上げたんだわ」と青山さん。今池のご近所付き合いがよく分かる立ち寄りでした。

TOKUZO

今池は大人が真剣に楽しむ場所!

今池の魅力を知るためのはしご酒もいよいよラストスパート。林さんのホームグラウンド『TOKUZO』にやってきました。

この日もライブがあり、訪れた23時頃はちょうど打ち上げタイム。『TOKUZO』の人気ドリンク「コーヒー焼酎」を飲みながら、林さんのボスでもあるオーナー森田さんと今池の魅力について話しました。

「今池は地元の人が地元に多く住んどる街。それに林みたいに外から入ってくる人間も増えとる。だから人口が急上昇しとるホットスポットなんだわ。あと昔からの歓楽街だからかアウトローにも優しいな。今日、林と会ってきた商店街のメンバーなんかは、ウソのつけん表裏のない人が多いんじゃないか。え、なんで今池が好きかって?そんなもんおまえが音楽を好きなのに理由あるか?それと同じで好きなのに理由はいらんぞ」と森田さん。

そして「今池まつりの存在も大きいと思う」とは林さん。もともと今池まつりはコンセプトがないといわれた商店街のイメージを逆手にとって平成元年から始まったなんでもありのカオスな祭り。大人たちが真剣に楽しむ場としてみんなで共同作業することで、地元と新参者との人間関係が育まれ、現在の今池のイメージにつながっていると感じました。

自由で活気があり、敷居が低く懐が深い街・今池。そんな印象を今回の林さんとのはしご酒で出会った人たちの人柄からも強く受けました。「10年以上今池におるけど、まだまだ知らんことばっか。だから面白いんだわ」という林さんの感性は、住む場所を問わず大切なことだと思いました。

PROFILE

案内人Izumi Hayashi

愛知県甚目寺町出身。愛知文化服飾専門学校を卒業後、テレビの制作会社勤務をはじめ多種多彩な仕事を経験し、朝5時まで働けるという理由でアルバイトの面接を受けTOKUZOで働き始める。現在はTOKUZOのスタッフとしてだけでなく、ライブやイベントの企画制作を行う“パシリッツ”としても活躍中。最近LINEを始めたばかりの四十路女子!
今池商店街ホームページ:http://imaike.gr.jp

ライターToshio Sawai

愛知県出身、清須市在住のライター。情報誌の編集制作、音楽事務所でのマネジメント業務を経て独立。読書とヨガが好き。嫁のおかんが毎日かけてくる電話を1日おきに減らしてもらうための上手な言い方と、父親のリハビリ、娘の成長、嫁との対話が目下の興味。

カメラマンTakayuki Imai

1974年 生まれ 1999年 写真始める 2002年 フリーランス 2016年 猫を飼い始める